この記事では、労働基準法第19条に記載される「解雇制限」についてご紹介します。
社会保険労務士の試験対策にもなる内容です。
ご参考下さい!
解雇とは
まず解雇とは、何でしょうか?
解雇とは、会社(使用者)が従業員(労働者)に対して、労働契約を将来に向かって解約する一方的な意思表示のことをさします。
なお、会社が従業員に対して行う、解雇の意思表示は書面ではなく、口頭により行うことも可能とされています。
また、何でもかんでも会社が従業員に対して一方的に意思表示することで解雇ができるかといえばそうではありません。
労働契約法において「解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められる場合は、その権利を濫用したものとして、無効する」と規定されています。
つまり、客観的にみてちゃんとした理由がないと解雇は認められないというわけですね。
【参考】定年制は解雇になる!?
ここで参考として定年制による退職について取り上げます。
定年制による退職は解雇となるのでしょうか?
実は定年制は解雇にならず、定年退職と考えるのが一般的です。
ただし、それには条件があります。
その条件とは、
就業規則に定める定年制の規定が、従業員の定年に達した翌日をもって雇用契約を自動的に終了することを明らかにしていることです。
また、この規定にもとづいてきっちりと運用がなされていることと運用するための対応が会社側で適切に行われていることも求められます。
色々とややこしいですね。。。
定年退職とは別に、定年解雇制という制度もありますが、定年解雇制まで取り上げるとさらにややこしくなるため、定年解雇制はまたの機会にご紹介することとします。
解雇制限とは
前置きが長くなりましたが、記事のテーマである解雇制限の内容へと入りましょう!
まず、解雇制限とはどのような内容なのでしょうか?
解雇制限とは、仕事を理由にして従業員が働く能力が落としてしまい、その間に会社が従業員を解雇することを制限することをさします。
では、なぜそのような解雇制限が定められているのでしょうか?
それは、 仕事が原因で従業員がケガや病気になった場合、その責任は会社にあります。
会社のせいで従業員が休業しているにも関わらず、会社が従業員を解雇するのは道徳的に許されるものでなく、また従業員の生活に対する重大な脅威となるためです。
解雇制限となる状況は!?
では、解雇制限となる状況とはどのような状況でしょうか?
労働基準法によると解雇制限の対象となる状況(期間)として以下の内容を定めています。
使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。
引用:労働基準法 第19条 解雇制限
つまり、業務を理由に負傷した場合や病気にかかった場合の休業期間と休業から復帰した後の30日間、産前産後期間と産後復帰した後の30日間は解雇制限の対象となるわけです。
なお、この30日間とは営業日ではなく暦日での計算となります。
解雇制限の対象とならない期間
次に解雇制限とも考えてしまいがちな期間について考えてみましょう!
以下のような期間は一見「解雇制限の対象期間かな!?」と感じますが、実は解雇制限の対象にはなりません。
① 業務を理由に傷病で療養のために病院に通っているが、休業していない期間
② 私用により傷病、通勤災害により休業している期間
③ 法律で定められた期間を超える産前産後の休業期間
④ 育児休業・介護休業の期間
育児休業や介護休業については、よく解雇制限の対象期間と混同しがちですので抑えておきましょう!
解雇制限期間中に解雇する方法とは
最後に解雇制限期間中に解雇する方法をご紹介します!
労働基準法によると解雇制限期間中に解雇する方法(例外)として以下の内容を定めています。
使用者が、第八十一条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。
引用:労働基準法 第19条 解雇制限
つまり、会社が従業員に対して打切保障を行う場合と天変事変などやむを得ない場合で事業の継続が困難になった場合は解雇制限期間中でも、従業員の解雇ができるということですね。
なお、打切保障は、従業員が療養開始した後に3年経過しても病気が治らない場合において、会社が従業員の平均賃金の1,200日分の手当を支払う必要があります。
また、天変事変などやむを得ない場合で事業の継続が困難になった場合については、所轄の労働基準監督署の署長の認定を受けなければいけません。
解雇制限のまとめ
最後に今回特集した「解雇制限」のポイントについてまとめます!
「解雇制限」 ポイント!
〇 解雇とは、会社(使用者)が従業員(労働者)に対して、労働契約を将来に向かって解約する一方的な意思表示のことをさす。
〇 従業員が業務を理由に負傷した場合や病気にかかった場合の休業期間と休業から復帰した後の30日間、産前産後期間と産後復帰した後の30日間は解雇制限の対象となる。
〇 解雇制限の例外として、会社が従業員に対して打切保障を行う場合と天変事変などやむを得ない場合で事業の継続が困難になった場合は解雇制限期間中でも、従業員の解雇ができる。
以上、「解雇制限とは!?労働基準法19条を解説!」でした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。